
地域と大学生がまちの未来をともにつくる
加賀のまちには素敵な山やみどりがたくさんあります。山代温泉は総湯のすぐそばにみどり「萬松園」がある一方で、有効利用されていません。ヒアリングや文献調査から萬松園が山代温泉の文化・地域性と大きく関わっていることが分かり、「萬松園とまちのビジョンを描くグランドデザイン」「子どもたちと宝探しを行う薬師山探検隊」など、再生に向けて活動してきました。さらに地域の方々を巻き込んで空間作りを進めていきます。
萬松園の未来に向けて
山代温泉では、総湯・湯の曲輪に寄り添うように萬松園があります。まちのすぐ近くにある「みどり」はとても魅力的だと思いましたが、実際に萬松園を散策してみると、放置され繁茂した草木、昼間でも薄暗い環境、イノシシ・クマの出没、廃業した温泉旅館など、人との繋がりが希薄化していました。歴史的文脈のある萬松園が山代温泉のまちや人々との関わりを恢復し、未来の暮らしの豊かさを創出する環境にしたいと思い、プロジェクトに取り組んでいます。
〈2018年度 山代温泉の歴史・現状・未来への想いの調査〉
2018年度には、温泉旅館経営者や清掃活動を行う地域住民などの山代の方々へのヒアリング調査や文献・石碑の調査を行いました。その調査から、萬松園からマツタケを採ってマツタケパーティーをしたり、アカマツの木材を九谷焼の燃料にしたり、萬松園で子どもたちが遊んだりと、萬松園と山代温泉のまち・人々が多様な循環の中で重層的で有機的な繋がりを持っていたことが分かりました。
そこで、これらの萬松園の文脈を紐解きながら、萬松園の未来に向けて活動できるのではないかと考え、2019年度は2つの取り組みを行いました。
〈2019年度 薬師山探検隊2019 by まちこや〉
1つ目は、「薬師山探検隊2019 by まちこや」です。子どもの学習支援団体である山代まちこやとコラボして探検隊を結成し、山代の小学生と萬松園をフィールドワークして宝探しをしました。
全15回の活動の中で、子どもたちは、シイノミを食べたり、落ちた葉や枝を利用して工作したりする中で自然と触れ合っていました。八十八体の石仏を具に見て比較してみたり、山代文化遺産との関わりを探ったりする中で、歴史・文化を紐解くきっかけを掴んでいました。探検隊を通して、萬松園の自然や歴史・文化を体感し、生き生きとする子どもたちの姿に感激しました。
〈2019年度 萬松園グランドデザインの作成〉
2つ目は、山代温泉と萬松園の将来ビジョンを描く「萬松園グランドデザイン」作成です。大学の卒業制作として取り組み、昔から紡がれてきた山代の「地域性」をたよりに解き、30年後に向けたまちと萬松園のあるべき姿を提案しました。
〈これからの取り組み〉
萬松園の未来に向けてプロジェクトに取り組む中で、2つの視点:「いま何ができるかを考えて取り組む視点」と「30年先を見据える視点」が重要だと考えています。
前者の「いま何ができるかを考えて取り組む視点」とは、萬松園の産物利用や空間利用を通して、暮らしの豊かさに還元していくことができるか、試行錯誤を行うことにあります。「薬師山探検隊」は、この視点に基づいた取り組みで、萬松園に紡がれてきた自然・歴史・文化を通して、子どもの学び・遊びの場としての価値を再確認することを目的として行いました。
後者の「30年先を見据える視点」とは、萬松園の自然をより良くしていくことや、廃業旅館等のハードを更新することはとても長い時間を必要とするもので、今のただの延長線上とは異なる「遠投力」を持つことです。「萬松園グランドデザイン」は、この視点に基づいた取り組みで、これからの萬松園・山代温泉に求められる目標像やそれを具現化する空間を明らかにすることを目的として行いました。
この2つの視点・取り組みはバラバラのものではなく、両輪で進めていかなければなりません。「薬師山探検隊」を通して、萬松園で目を輝かせてた子どもたちから、未来の萬松園の担い手が生まれてくれることを期待しています。「萬松園グランドデザイン」で明らかになった尾根の小径に沿ってアカマツ林を再生していくという方向に基づいて、地域の方々とアカマツの再生に向けた活動をできるところから始めていきたいと考えています。
萬松園の未来に向けて、いまできることから一緒に始めていきませんか?